小児脳腫瘍の会シンポジウム「守る」 ディスカッション要約

2008年11月3日にシンポジウム「守る」を開催しました。その第三部で参加者によって行われたディスカッションを要約しました。テープから起こされているため、分かり難い点が有るかも知れませんが、ご容赦ください。

なおディスカッションの中では、事前に行ったアンケートの結果を紹介し、そこに現れた患者家族の意見や疑問を踏まえて、パネリストの皆さまにコメントを頂いています。

1.病院選択―セカンドオピニオンについて

司会:シンポジウムに先立ち行ったアンケートについて説明しながらディスカッションを行っていきたい。正規のセカンドオピニオン(担当医に許可をとって保険で認められているもの)とそうでないセカンドオピニオン(注参照)があり、みなさんの苦労が伺える。「セカンドオピニオンはいかがなものか。反対である。」という先生方は多いのか?

注:セカンドオピニオンは、その目的での情報提供書に対しては診療報酬点数が付いていますが、セカンドオピニオン自体は保険診療外ですので、医療機関が小児がんについてセカンドオピニオン枠を設置しているかいないかの差で生じます。

医療関係者: セカンドオピニオンについては脳神経外科と小児の先生は随分違うと思う。特殊なところがあると思うので、地元で受けた方がいいという先生は実際多いと思う。

司会:拒否された方とか、しにくくてできなかった方。ご意見を。

患者家族:セカンドは沢山うけた。脳腫瘍との診断時、どこに相談していいのか全くわからず、セカンドオピニオンを受けたいと主治医に相談したら、受けさせてくれた。最初は呆然として何も打つ手がなかったので、第三者機関が資料を用意して、紹介してくれるとよい。

患者家族:最初先生の所見は下垂体を残せないといわれ、納得いかなかったので地元でセカンドをうけ、やはりその先でも同じ答えだったので、「実はセカンドを受けました。そこの先生も同じようなことをおっしゃっていました。」といったら、「なら納得していただいて良いですね」とすんなりであった。

医療関係者:色々な医者がどういうことを考えているのかということをむしろ紹介して聞いていただくというのは、自分の考えが本当にそうだというのを確かめていただく意味もあると思うので、むしろわれわれ医者側としても必要なことだという認識は少なくとも持っている。

司会:患者側としては隠れていくしかない場合がある。行政側からの指導などあればよいが、学会の方でセカンドオピニオンの指導などはあるのか?

医療関係者:小児がん学会では小児がんの戦略をたてていくというのが中心となっており、これまで脳腫瘍を扱ってこなかった経緯がある。セカンドオピニオンについては話題にのぼっていない。今後はセカンドオピニオンについてもひとつの大事なテーマとして考えていかなくてはと思う。

医療関係者:小児血液腫瘍の臨床をしてきた。血液腫瘍の診断治療に関してはグループスタディーが確立しており、現在血液腫瘍はほぼ日本全国どこの病院でも同じ治療が可能となっている。原則として小児科側ではセカンドオピニオンはほとんどの病院で拒否しないし、確認してもらうためにむしろ勧めることもある。再発例であれば治療選択に迷う症例が非常に多く、実際どういう治療をしたらいいか、その方に最適であるかどうかについてはぜひともセカンドオピニオンを聞いてきて貰うというのが結構一般的になってきていると。脳神経外科とは違って、初発時の治療選択がかなりきまってきてしまって、均一の治療が血液腫瘍に関しては日本中で行われている状況である。

司会:脳腫瘍の場合はセカンドオピニオン=医者選び、腕選びになる。

医療関係者:脳腫瘍の場合は組織型があまりにもたくさんありすぎて同じ病名で同じ組織でも年齢によって違うし、化学療法だけでやっていくものもあるし、手術だけでやるものもあるし、化学療法と手術と両方もあって、さらに放射線治療もあって、どれかひとつ選ぶということも年齢によって同じ疾患によって違ってしまう。そうすると手術が得意な人は手術に持っていくし、手術ができない人は「いや危ないから小児科に行って化学療法をしよう」と。同じ病気の子を診ても受け持つ人の力量によって変わってしまうということもある。非常に選択肢が複雑すぎる。脳腫瘍の場合はセカンドオピニオンの重要性は他臓器の小児がんに比べてもっともっと重要である。

医療関係者:ある程度集約化されて、二十とか十いくつの病院になったらかなりそういう初診時の治療の意見というのは一致するものか?

医療関係者:アメリカ、ヨーロッパでは小児脳腫瘍は全症例登録制が原則である。同じ治療をすることもある。手術は別にしても。センター化されているので、それぞれ小児病院でも脳腫瘍の数がすごく多いので、その小児病院の先生がすごくなれている。ある程度集約化されれば、ある程度技術のある外科医もいるわけだし、全例登録制なのでメジャーなものは勝手な治療はできないように、いわゆる白血病と同じようになっている。日本には全くそういう制度がないので、小児神経腫瘍医は小児科から出ていただいて、その方が主導してある程度メジャーな病気に関しては、全例登録制と患者さんの治療センターの集約化があれば、主だったものは白血病と同じような「均てん化」ができてくる。その端緒に日本は今立っていない。

司会:白血病における標準治療の確立過程に小児脳腫瘍についても学ぶところがあるのではないか。10年20年かけてJPLSGの団体でやってこられたということだが、それは脳神経外科医と小児科医の両方でユニットを組むということは可能か?

医療関係者:先ほど脳神経外科医からご指摘があったように、ニューロオンコロジストという小児脳腫瘍を専門とする小児科医は日本にはまだ育っていない。例外的に何人かいらっしゃるかもしれないが、関心を持っているという段階。ただ小児科医は脳腫瘍が非常に大切であるし、治療終了後の状況をみたら、やはり早く開発していかなければならないということは思っているが、それを専門としてライフワークとしてやっていくという人が育っていないという現実がある。

司会:専門医制度というのは各学会にあると伺った。脳神経外科の中でも専門医がわかれていくのではないかという話だった。小児科医が非常に現在少ない中でこんなことをお願いするのは恐縮であるが、小児脳腫瘍専門医をお願いできないか。

医療関係者:小児がん学会の中でも小児がんの専門医ができようとしているが、そこに脳神経を含めたニューロオンコロジストも入っているかというと、なかなか今そこまでは。

司会:これから提案として出させていただこうとしているのは、小児科学会では小児脳腫瘍のエキスパートの認定をしてもらって、その先生のところにセカンドにいく、脳腫瘍学会は脳腫瘍学会で認定してもらって両方の先生がそろっている所を拠点病院化していただければベストではと考えているが。

司会:実績やお名前を出していただければ患者の方で行くので、自然と拠点病院化していくのではないかなと思うが。

医療関係者:専門医制度の話をするが、ここ2,3年の間に日本小児がん学会と日本小児血液学会という二つの学会が合体する。主な病気は血液がんあるいは固形がん。その中には脳腫瘍は含まれていない。新しく合体した学会の中で考えている専門医についても白血病と他の固形腫瘍が中心。そもそも子どものがんというのは、小児科が治療の中心になって治療にあたるべきだという風な考えが小児科の方にあり、全身をきちんとみれる小児科医があたるということは大事だと思うが、ただし、脳腫瘍については違う考えもあるという想いを強くした。そういう視点は今まで小児がん学会には確かになかったのではと思うので、今日は非常にいい勉強をさせてもらった。もうひとつ脳外科の先生にいわれたのは、「脳神経外科がいるということが、脳腫瘍を治療できる体制ではないのではないか。」というご指摘だった。学会として、これからどういう風に脳腫瘍のエキスパートと話していかなくてはいけないのかということについて、今日非常にいいご提案をいただいた。間違いの無いような方向で、幅を広げていかないといけないと認識した。

司会:がんの対策は基本的には「均てん化」とい言われるが、脳腫瘍に関してはそうではなくて、さっきおっしゃっていたように「ユニットを作ってそこに集中化していく方向」をまずとるべき。そのためのまず一歩として、各症例毎の推奨病院・医師の情報が共有できる体制これを作っていくことを、私達患者会だけでなくもっと広げて、公的なものに持って行きたい。

2.集学的治療について

司会:集学的治療をうけたのは約75パーセント。しかしながら推進上の問題に多くの方が、各科の連携不足を挙げている。化学療法はどこで受けたかの質問については、脳神経外科36%、小児科29%、小児血液腫瘍科16%、血液腫瘍科13%で内科系は58%。形は集学的治療であるが、チーム医療がうまく機能していないという意見が多かった。ご意見のある方どうぞ。

司会:化学療法を受けた科が脳神経外科が36%。適切かどうか。腫瘍学会がん薬物療法認定医制度があり、科をまたいだがんの専門家であるが、その研修に脳神経外科は入っていない。

患者家族:わたしの子どもが治療をうけた大学病院では、治療中は引き継ぎをしながらやっていただいたが、治療が終わるとまるっきり放射線科と脳外科の先生方とお会いする機会がなく、それを小児科の先生に言っても必要があれば自分で予約をとって行ってくださいという感じで。個々に対して他の科と連携をとってという感じはしない。

司会:要は、親がしっかりしないと、ちゃんとした集学的治療がうけられないという現状がある。

患者家族:わたしの子どもが治療を受けた病院では、整形、眼科は小児科の先生が入院中に一緒に来てくださったが、脳外科だけは脳外科の先生だけ。放射線治療を受けていたときに顔がすごくむくみ、マスクが入らないということがおこった。脳外科の先生からマスクを作り直しもらって治療を続けたいという話があったが、その危険性についてははじめに放射線の先生から説明を受けていたので、放射線科の先生にお話をお伺いしたいと聞いたところ、「僕達の方で聞いてお伝えするので」と却下された。集学的治療ができているとは思えなかったが、されているという説明だったと思う。

患者家族:地元で「放射線の先生と話がしたいんですけれども」といったら、忙しいから僕が電話でというので、何回か言ってもらって、結局やっぱりうちのこどもの場合はとった跡が大きかったので「ピンポイントで当てる気ないです」といわれて、手術をした脳神経外科の先生がセカンドというのがあるからこっちに来てやったらどうだい?と言われて、その病院で結局、片目を失明しても知能が劣るよりかはいいからということで、むこうに行ったらその先生は放射線の先生とツーカーの感じで動いていたので「ああもう大丈夫だ」と思ってそのまま任せた。こちらの地元では、放射線の先生とは一回も話を聞けず、その脳外科の先生が「僕が言ってることに納得できないんだったら他へ行ってくれ」という感じで言われた。そのまま今でも経過はいい。ありがとうございます。

司会:あっちこっち体力使うことになる、セカンドを探すというのは。小児科と脳神経外科は仲が悪いわけではないと思うが?それを聞きたい。

医療関係者:院内で治療方針を相談するシステム「キャンサーボード」というのがあり、集学的治療をどうやっていくか、話し合っていかなくてはいけない。院内で定期的に会議を開いて、小児科医とか放射線科医と病理医も外科医とかも集まってその子の治療方針を決めて、一回ではなく定期的にするのが本来の姿、それが集学的治療。脳腫瘍に関しては非常に少ない。それは皆非常に忙しいため。小児の腫瘍や白血病はアメリカとかヨーロッパと比べるとスタッフの数が全然違う。トロントのチルドレンズホスピタル。ひとつの病院の小児の脳腫瘍に専従して働いている人たちだけで60人いる。日本では二人、三人という世界。米国などはシステムを持っていてすごい膨大なお金をかけているので、皆も人員的に余裕があるし会議も開ける。私らも臨床腫瘍学会の暫定指導医の肩書きも持たせていただいていて、脳腫瘍が薬物治療の専門医ができるかというと、日本には臨床腫瘍医の資格を持った人―薬物治療の専門医ですねーがまだ200、300人の世界。本来15000人必要。さっきいわれたのは数が全然足りない。日本の私達の手弁当の集学的治療とは違う。そこのところを少し理解していただきたい。やっぱり小児脳腫瘍にもう少しお金をかけて欲しいということは言わなければいけない。

司会:もうひとつの問題は、主治医が各科にいる。内分泌、小児科、化学療法をやっていただく血液腫瘍科などに。チーム医療と名前が変わった場合はリーダーがいる。3人のリーダーではなくて3人をまとめるリーダーができることでこちらは迷わなくてすむ。

司会:アメリカはたしか60億円がんのこどもにお金をかけている。日本はがん対策基本法が通って大人のがんも含め4,5億円。全く違いがある。その中でどうやっていけばいいのか。先生方は非常に忙しい。リーダーがいるといいが、その方もお忙しい。

医療関係者:今のリーダーに関して、神経芽腫であれば以前は小児外科医がリーダーという存在であったのが、今は小児外科医でも進行期の神経芽腫は手術でとっても治らないのをわかっている。今はどちらかというと、神経芽腫の患者さんが入ってきたら、いつの時期に手術をするのか、その前にどこで末梢血幹細胞を採取してどうするのかスケジュールは基本的に小児科医がリーダーシップをとってやっている。そこでその間に外科の手術あるいは放射線をどこでいれるかというのは、もちろん小児外科医との合意のもとやっているわけだけれども。それが脳外科となると先ほども言ったぺディアトリックニューオンコロジスト(小児脳腫瘍医)がいない、われわれがリーダーシップを取れるかというとほとんど経験もないし、もちろん化学療法はある程度白血病とか神経芽腫でやりなれているので、こういう抗がん剤をあまり副作用無く支持療法を駆使してやり遂げる自信はあるが、小児科医が脳腫瘍の患者さんの治療全体のスケジュール管理どう組むかということに関しては経験不足。それを脳外科の先生が10年20年30年と積み重ねてこられている。そこの経験をわれわれがまだ共有できていない。そこで今リーダーシップを小児科医がとれるかというとちょっと取れない。治療に関しては。僕自身は治療後の色々なことに関しては、小児科医がリーダーシップをとって診ていくことはしていかないといけないかなと思っている。そうなると治療のはじめから、少なくとも一緒にやって行きつつ、終了後の色んな支援に関しては、小児科医がある程度中心になってやっていくことはできると思うが、治療のリーダーシップをとるというところまでできる小児科医は日本でほとんど育っていなくて、たぶんこの先生だったらと当てにできる先生は、日本にはあまりいないというのが現状。

司会:医療者間の意見が違うというのは患者側の立場としては大変困る。不安になる。そこを統一していっていただかないと集学的治療とはいえないのではないか。

医療関係者:絶対的に将来的に必要なのは、小児科医がこのリーダーシップをとるべき。やはり外科医ではなくて。純粋に外科手術だけで治る手術というのは別だが。小児がん学会が脳腫瘍の分野を大きくして小児脳腫瘍医を育てなければならない。小児科医であるからある程度内分泌、成長も知的発育も知識があって、外科医はそこに手術しなさいといわれれば手術をして力をお貸しすると。その中の熟練した外科医を育てなければならないという役割分担。日本の場合は小児科の先生は本当に余裕がない。やっぱりこれは本当に社会的に大きな問題だということで、厚生労働省にひとつ動いていただいて、小児科の中にユニットを整備するような立案をひとつ動かしていただかないと、どうにもならないと思う。

司会:民間の方でも資金集めなどをして行った方がいいかもしれないと個人的には思っている。アメリカと比較しても財団法人の数は60分の一である。

患者家族:わたしの子どもが受けた病院では小児脳腫瘍の担当の先生が最初の手術から退院まで全部主治医をしてやっていただいた。放射線の時はその主治医から放射線科の先生に連絡を取って放射線を受診する。化学療法の時は血液腫瘍の先生も一緒にいらっしゃって、週三回血液腫瘍の先生が一緒に回診にこられるので、化学療法について聞きたい時はいくということで。その他、化学療法中、丁度年齢的に歯が抜け替わる時期だったので、そのときは口腔外科に主治医の先生から連絡をとってもらって、そこを受診するとか色んな面で各科に連絡をとってもらったりした。入院から退院まで同じ主治医でかつ色々な専門の先生に意見を聞けたという点で、やりやすかったなというのがある。ただ、退院後脳神経外科の先生はMRの方で結果を把握していっていただくのと、血液腫瘍の先生には血液検査ということでバラバラに受診をしていく間にだんだんと連携が取れなくなってきて、ちょっと意見が違うんのじゃないかと感じることもあった。院内にいたときはすごくよかったが、退院後の連携というところで検討するところがあるなと感じた。

司会:お話のようにうまくいっている施設もあるので、われわれとしてはうまくいっている施設をみなさんで共有して、できるだけ集学的治療を進められるようにしていきたい。それから、今病院選択ということで、病院情報の提供ということも国をはじめ、集学的治療のチーム体制も情報公開をやっていただくこともひとつの解決かなと思う。基本的に集学的治療のまとめでは、全体を把握する医師の不在ということを厚生労働省なり病院等々に要求していくということを今後したい。脳神経外科の先生がおっしゃるように、今後小児科医がリーダーシップを取るべきだということであれば、小児科の先生も今日議論していただいているが、脳腫瘍の外科のことも理解して一緒になってリーダーシップをとっていただきたい。

3.初期治療後の情報〜長期フォローアップ

司会:ほとんどの方が初期治療後不安や困難を感じている。第一位は再発でついで医療費、自立、就職、進学と続き将来の不安が大変大きい。またそれを相談できていない人が多い。グリーフワークについても相談をしている人は大変少なく、外部の支援をほとんど受けていない実情がある。長期フォローアップの相談のシステムをお願いしたい。

医療関係者:まさにそういうことでどういったシステムを作っていこうかと考えている段階。その必要性は非常によくわかるし、マニュアルがまだまだの段階。全国で14箇所レイアウトさせていただきましたけれども、自分達でアナウンスすることによって、どんな相談がくるかと。それに対してどういう答え方を、解決策を見出して行ったかという経験を情報交換をしようという段階。当然そういうところにはこういう患者さん・家族の会などと連携しながらあるいは、実際にこういう風にして解決した、こういう問題があったということも含めてまずは色んな情報を交換したいというのが今のところの段階。

司会:それではこれからということですね。先日先生にお願いしたが、長期フォローアップ手帳について、小児脳腫瘍フォローアップ手帳は作れないか。小児がんだけだと科がたくさんあるので足りない。特化したものを。

医療関係者:それをいきなりというのはなかなかむずかしい。まずは小児がん全体のものを完成したい。もちろん言われる意図はわかる。長期フォローアップ手帳で白血病とか他の患者さん向けのを作っても、小児脳腫瘍の場合はそれぞれ情報が足りないし、プラスアルファで必要というのはわかる。

司会:手帳かファイルと伺ったが、ファイルにしていただければ中に入れる用紙というのは各学会に頼めば脳神経外科が書くもの、内分泌科が書くもの、脳腫瘍の場合は知能指数だってとらなきゃいけない。歯科、眼科だってある。色んな科に頼めばいいことであってファイルだけ作ればよい。用紙だけを規定して。

医療関係者:今のところファイル形式にして色んな形で使えるようにと考えているが、試作は作っている。それ以外に実際現場で使うには不都合があるということで今見直しをしていて、印刷までにはいたっていない。ただまあ、今年度中から来年度には出せるようにということで今作成中。

司会:長期フォローアップ手帳というか治療サマリーのことについて。

医療関係者:治療サマリーについてはこの一年以上使っている。

司会:脳腫瘍に当てはまるのか?

医療関係者:あれはあくまで治療サマリー。IQとかそういうことは次にくることなので、どういう治療を受けた、どんな病気だったかということと病理組織も含めてリスク因子をきちっとあの2枚で集約するということなので、あれは脳腫瘍でも十分使えると思う。ただ、その後のフォローに関しては、言われるようにIQ問題とか、成長曲線は予定しているけれども、それ以外のプラスアルファの情報はいると思うので、手帳に関してはファイルで色んな形で追加にできるようにしたい。あれはあくまで治療サマリーであって、何枚にもわたると結局なかなかサマリーとして普及しないこともある。ただ、紙2枚にすぎないがそれでも内容的には膨大な情報なのであれを持っておくだけでもこれからの患者さんは大丈夫だと思うけれども、10年以上前の患者さんなどはあのサマリーを作るのは大変である。ほとんど不可能な人も多い。あれだけでも。あの情報だけでも。

司会:そのファイルというのは紙のファイルか?それとも電子的にも?

医療関係者:両方ある。ファイルメーカープロで作っているのでどちらでもできる。基本的には紙ファイルを渡す。ただ、データとして保存はできる。一番問題なのは本当に重要な個人情報、名前、疾患名も含めてマル秘の情報が入っているので、どうやって管理するのか。これを電子ファイルにしてしまうと中で流出してしまったり、とんでもないことになるのでそれが非常に問題だなと。

司会:その治療サマリーは小児がん全体に対してもう配布されている?

医療関係者:JPLSGという長期フォローアップ委員会ができたところでもうすでに公開している。一応会員に使ってもらうように今お願いしている。

司会:それは会員の先生方にということか?そうすると小児脳腫瘍は漏れてしまっている?

医療関係者:今は漏れている。ただ、しばらく試作して使ってみて問題がなければだれでも会員じゃなくてもアクセスできるところに公開する。長期フォローアップ委員会はJPLSG内で始まった委員会だが、長期フォローは小児がん全体で重要だということで、血液腫瘍に限らず小児がん全体を考えていく会に広げていこうとしている。ただ脳腫瘍に関してはいろんな面に関してわれわれも情報不足。

司会:脳腫瘍は違っているのでやはり開拓していくということで、それを随時お願いするということで。それが長期フォローアップにつながる。たとえば子どもの小児科から成人科に移るときの医療情報にもなるし、セカンドオピニオンを受けるときの情報にもなるし、厚生労働省の登録の基礎にもなる。

医療関係者:ただ個人情報なので扱いを大変注意しないと、紛失してしまったなどとなるととんでもない情報漏えいになるので。医療機関からわたしたものをどこかにという以外に、ああいうファイルを作ったこと自体が何かで情報を漏洩したら大変なのでその辺もわれわれ慎重に考えていかなければならないなと思っている。

司会:それは結局のところ、小児がん登録にも通ずることになるのか?

医療関係者:小児がん登録は基本的に発症したとき、きちんとして診断名が付いたときに。診断名がかわることがあるので、発症してから一、二年の間にきちんとした情報をとるというのが原則。今の手帳、サマリーはそういう目的でなく、自分の履歴として、患者側の資料として、新しい手術の先生だとか先ほどのセカンドオピニオンとかの利用の方に重きを置いている。

司会:脳腫瘍の腫瘍別の登録はきちんとされているのか?きちんとした数字を見ようと思っても、ない。小児慢性疾患で悪性腫瘍としては登録すると思うが、あれもとっている人ととっていない人が。

医療関係者:おそらくないと思う。脳腫瘍については、脳神経外科学会の中に登録委員会があり、それは小児に限った登録でなく成人もふくめた全体の登録で、その中で小児の集計はある。現在問題になっているのは個人情報保護法ができたために、きちんと二重登録がないかとか精度管理が難しくなっているという段階。学会の方も難しくなってきていると聞いている。小児がん学会のほうで、小児脳腫瘍を含めて、学会ベースで全症例に近い登録を実施したいと考えているが、なかなかどれだけ協力できるかということはやってみないとわからない。

司会:どうもありがとうございました。私達で実施したアンケート調査でも長期フォローアップ手帳が必要と答えた方は全員で100パーセント。そういった声を含んでいただいて、現在小児がんの長期フォローアップ手帳が作成されているということであるが、そこに小児脳腫瘍特有のものを埋め込む工夫をしていただきたい。

4.行政について

司会:内部障害の医療費については声が多いのではないかと思うので、せっかく先生方がいらしているのでぜひ声を。

患者家族:うちの息子は成長ホルモンをやっているが、今142である。156.4を超えると医療費(小児特定疾患)はなくなってしまう。156.4はどの数字かと調べた。156.4というのは昭和45年の中学二年生の身長。何年前の話か、いい加減見直すべきではないのかと思う。見直す予定はないのか。今の中学二年生の身長に合わせてどうしてやらないのか本当に不思議に思う。

医療関係者:成長ホルモンの小児慢性特定疾患のホルモンの終了時の身長であるが、男の子が156.4であるけれどもそれはみんなは反対したのだけれども、唯一の問題は財源の問題。小児慢性特定疾患で百億円ぐらいが全体の財源として充てられていて、そのうちの50%は成長ホルモンに充てられている。そういう中で、他のもっと悲惨な病気がいっぱいあるよという話の中で、成長ホルモンの最後のところでもっと使わせて欲しいというそういう声はなかなか通らない。バランスの問題でそうなる。根拠は中学校2年生でもなんでもなくて2000年の統計のマイナス2.5SDである。それが156.4。

医療関係者:自治体によっては、身長が超える段になっても切々と訴えればそれで通る場合もある。

医療関係者:それは違反ではなくて合法。お金の主体が地方自治体にあるので地方自治体でのその判断は、それはあっておかしくない。基準は厚生労働省が作るが、運用するのは各地方自治体の判断がありうる。声を大きくしても大丈夫だと思う。

司会:下垂体機能低下症は内部障害に認定されないか?

医療関係者:なかなかむずかしい。ひとつは小児慢性特定疾患は20歳で切れる。18歳までの認定で延長は20歳までですが、それを法律的に児童福祉法で規定しているので、法律的なその枠組みがあるのでそのまま延長して欲しいといっても法律の上でしにくいものがある。厚生労働省の中でも担当部署が違う。成人をカバーする部署。成人をカバーするのは、難病。特定疾患、いわゆる難病に関して言うと、130疾患ぐらい今難病になっている。今年の6月だったか、下垂体機能低下症が難病に入った。しかし、難病に入るということと医療費が出るということの間にもう一段階ある。多くの難病は医療費がでているが、まだ下垂体機能低下症は難病に指定されているが医療費がでていない。次の段階が踏まれると成人で医療費がでるという可能性がある。

司会:次の段階というのは45の中に入らないといけないということか?

医療関係者:たぶん。そこのところが色々な現状、どれくらい問題点があるのかそれについてどういう風な不都合が生じているのか訴えていかなくてはならない。それで加えてもらうという。

司会:要はグレーゾーンの人たちは、自立できるかできないかで、医療費を負担できるかできないかだと思う。このままでいくと薬がないから働けない、働けないから薬が買えない。どうどうめぐりであるが、たとえば医療費の上限をもうけるだとか難病のように全額国が負担するのではなく上限を決めてもらうとか、自立できるまで小児慢性特定疾患を延長するとか色々手があると思うのですがそういうのも難しいのか?

医療関係者:そういうことを含めてこういう会が力を出していく、声を出していくということの積み重ねで少しずつ変わっていく。役所の分担も、小児慢性特定疾患と難病では違う部署でやっている。それ自体が壁になっている。壁になっていることが、私達から、患者さんたちからすると非常な不利益である。それをなんとかしていこう。それを打ち破っていこうとすると可能性がある。すごく簡単でないことはわかっているが、一番近いのは患者さんの団体が声をだせば力になる。

司会:普通の保険にも入れないし、結局のところ助成もいただけないということなので非常に苦しいということを私達は言っていこうとは思っている。健常者以下障害者未満、常にどこに行ってもグレーなので。

司会:私達の声を大きくしていくことは大事である。難病で人数が多すぎて難病指定から外れそうになったが、アンケートを作って持っていっていくことによって難病が維持された例もある。下垂体も難病の中に今入ろうとしている。厚生労働省は今4倍ぐらいの予算を要求している。それが実現すれば可能になっていくかと。

医療関係者:それは研究費です。24億を100億ぐらいにするという。研究費として支出され研究されたことが基盤になって次に行くという、第一段階において非常に大きな拡張があるはずだということである。

5.支援・心のサポート

司会:20件の任意回答意見があった。一番多かった要望は治療実績の公開。先生方がおっしゃっていた小児脳腫瘍拠点病院の整備、小児脳腫瘍専門医と患者側が望んでいるということが合致している。それから相談、心のケアについては治療中から患児に対してケアをして欲しいという声が多かった。患児家族と医師の間のコミュニケーション改善の声もあった。まず小児看護師の立場について教えいただきたい。

小児看護師:小児専門看護師は日本看護協会の認定で、がんの専門看護師や精神疾患専門の看護師は最初にできた専門看護師なので人数が多いが、小児専門看護師は今まだ全国に22名。毎年認定試験を行っているので、これから徐々に増えていけばと思う。関東―神奈川、東京の病院に今集中している。なかなか他の都道府県には小児専門看護師はまだそんなに多くないが、高知、名古屋など徐々に散らばってきている。こども病院にいる方もいれば総合病院にいる方もいる。今大学院の方で専門看護師のコースを設けている大学院が増えている。そこで2年間小児専門看護師コースで学んだ後、小児の看護を専門的に行ってその後認定試験を受けることになっている。今後増えていくとは考えているが、小児看護師という範囲で現状としては、がん専門看護師などには勝てない状況なので、今回このように病院にいて欲しい専門スタッフはというところで入れていただいたので、こういう風な状況だということを同じ専門看護師の方にも伝えて頑張って行きたい。

6.教育

司会:学校に対しての説明は親がほとんど。ひとりで説明しなくてはならず理解してもらうのに苦労したという声が多かった。みなさんに意見を言っていただきたかったが時間がなくなってしまった。 これについては先ほど教育コーディネーターの方に紹介いただいた「病気のこどもの理解のために」(国立特別支援教育研究所のHPよりダウンロード可能)、を学校の先生方によんでいただきたい。また教育者むけの小児脳腫瘍のパンフレットを作成していただくということでよろしくお願いしたい。

司会:最後に意見のある方どうぞ。

患者家族:非常に今日の会は勇気付けられた。やはり患者としても自分達で動かなくてはならないというのを感じた。この問題に関しては、ましては国まで動かしていかなくてはならない部分もある。今日の勇気付けられた部分で、われわれ患者側ももっと組織を大きくしてパワーアップしていかないと動くものも動いていかないと。そのためにスタッフの方が一生懸命やられているのを肌で感じたので、今日この会に参加させていただいて感謝したかったのがひとつ。われわれ患者側が動いていく中でも、先生方にご助言いただいたり、ご協力いただくことっていうのはこれから出てくると思うので、その部分も宜しくお願いしたい。

司会:患者の親の立場で本音トークをしたかったので。やはり発表できてよかった。ありがとうございます。