悩みを分かち合う

毎日新聞の特集記事
『生きる・小児がん征圧キャンペーン
闘病をバネに/4 患者の会で本音』より

悩みを分かち合う

「助けて」。わが子の小児がんを突然宣告され、母親の悲痛な声が寄せられることがある。

横浜市金沢区の主婦、金子初子さん(44)は一昨年9月、患者会「小児脳腫瘍(しゅよう)の会」を設立した。そのホームページは同じ悩みを抱える親たちの交流の場となっている。「家族だけでは抱えきれない悩みや不安がある。本音を語り合い、心が軽くなることもある」。それは金子さん自身が経験したことだ。

長男新之介君(8)に脳腫瘍が見つかったのは偶然だった。2年前の5月、散歩中にバイクと接触し、県立こども医療センター(同市)に入院した。その時の検査で脳に約3センチの腫瘍があることが分かった。

初子さんの頭は真っ白になった。情報は少なく、不安は募るばかりだった。6月に手術を受けたが、腫瘍が脳幹部にあり摘出を断念した。良性だったことがせめてもの救いだった。

「おれ、悪い病気なんでしょ」。手術後、新之介君が聞いてきた。「早めに腫瘍が見つかったからラッキーなんだよ。神様にもらった命だから感謝して生きていこうね」。子供の前ではいつも強く。そう思えば思うほど肩に力が入り、自分がいつ壊れてしまうか不安で仕方なかった。

そんな時、病棟で同じ病の子を持つ母親と出会った。「悩みを分かち合える場所をつくろう」。すぐに意気投合し、患者会を発足させた。

1年半で仲間は全国に広がり約60人に。勉強会や親ぼく会をした。「役に立った」とお礼の言葉が届くとうれしい。仲間の声は前へ進む力も与えてくれる。病気の子供たちや学校に理解を深めてもらうため、絵本づくりも進めている。

新之介君が退院した今でも「腫瘍が大きくなったら……」との不安は消えない。新之介君は週1回通院するほかは、元気で学校に通う。自転車にも乗れるようになった。病によって思いやりの心が育ったようにも思う。

「消防士になって人を助けたい」。新之介君がそっと夢を教えてくれた。

【川久保美紀】=つづく


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2004年6月17日付 毎日新聞 東京朝刊より

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